受験生だった頃、図書館の学習室で勉強をしていました。
ある日、学習室の奥の席で勉強していると60代ほどの男性が声をかけてきました。
「難しそうなの勉強してるね。」
そういうと、その方は国語辞典を書棚から取り出して、机の上で小説らしき文章を書いていました。
その後、学習室へ行くとこの老人とよく会い、勉強に疲れたらこの方と話をするようになりました。
名前は林田学ということ、地元で不動産屋をやっていたこと、最近は不景気で店をたたんで図書館で文章を書いていること、この街は工場の閉鎖により景気が悪化したこと、さらにはどのような仕事につくべきかから、女性の見分け方まで。
受験勉強では学べない世間を学んだ気がします。
大学に合格して街を離れましたが、実家に帰省した時に図書館の学習室へ久しぶりに行ってみました。
懐かしい部屋を見回してみましたが、残念ながら林田さんはいませんでした。
しかし、林田さんの滋味にあふれた話は今でも思い出します。